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北の悲哀と激情が詰まった新バンド、2023年リリース3曲入りEP
Still I Regretやblue sketch.といったバンドで活動してきた千田akaみちのく氏の新バンドということで、逆に言うとそれ以外の前情報は無し。しかしNorthern Sadness Productionsとしてレーベルを立ち上げた上で、MEIANと同時リリース...しかもCDとカセットのバージョンもありという気合いの入りよう。"北の悲しみ"...中央集権化と貧富格差が加速していくこの現代社会においてローカル性を意識することは重要だが、レーベルやバンドの表現として閉じるのではなく繋がることもまた重要。すでにbandcampでも楽曲は公開されているんだけど、90年代のアンダーグラウンドなハードコアが背景になっているのはそれはそれでベースとしつつ、千田さんバンドの中ではこれまで以上にポップ性(越境性)がある表現になっている気がする。という知人特有の歴史の感じ方をしてしまうけれど、バンドの演奏的にもフレッシュな感覚があって、賛否が別れそうなタイトルも含めて、これは東京には無さそうだなっていう要素が散りばめられている全3曲EP。
tracklist:
1. クソみたいな1日の終わりに 03:05
2. 口は災いの元 03:48
3. 俺の中に巣食うもの 04:49
リリースインフォ / text by 大下真人(ex. Sandinista)
cold winter
極寒かつ雪深い地域も多い岩手県南においてcold winterが結成されたのは2022年2月のこと。過酷な冬の寒さに耐え忍び春を待ち侘びながらもコロナ禍で先が見えない時期にギターであるチダ氏を中心に立ち上がったバンドだ。
その音楽性は90's SxE〜Ebullition〜NEW SCHOOL等メタリックなハードコア周辺を基調としているように感じるが、激しい展開やテンポチェンジとメロディによってそれらの枠に収まらない多様な要素を感じる。広義のメロディックハードコアとしてオリジナリティを追求するもので、なにかのフォロワーで済ませる感が全くしない。
ダウンチューニングとツーバスが使われながらも曲に重苦しい雰囲気はなく、むしろ先へ先へと突き進むようなアグレッシブさを感じる。ザラザラした感触がする歪みのバッキングが曲の骨子となり、ソリッドでエモーショナルなリフがせめぎ合うように重なり、タム回しに熱量を感じる実直なビートと、ミドルが滑らかに鳴るベースがそれらをまとめ、感情を露わにしたボーカルが乗る。今回同時リリースされるMEIANとは対照的に生々しく有機的で、焦燥感を覚えるのは自分だけだろうか。
そう感じる要因の一つにベースボーカル熊谷氏の存在がある。別バンドのギターとして活動する傍らでMEIANのライブに通う20代の若者がCold Winterの初ライブに客として偶然居合わせ、ハードコアになりたいと話していたのが彼の加入のきっかけだ。この時代にここでハードコアをやりたいという若者がいるのか!?と甚く感動した記憶はいまだに新鮮なままだ。未経験ながらベースボーカルとしてバンドに加入し、たった1年弱の間に大きく成長を遂げ、この作品が完成したのはこの地においては一つの奇跡といえるだろう。彼のボーカルにはその思いに突き動かされるような衝動や意志が溢れているように感じる。
そして、『人間といえば?』『愚か!』『ですが…』というタイトルに触れない訳にはいかない。名刺代わりの一作目にしてこのインパクトよ!あまりに大胆かつシンプルな問いと回答が痛快で、先に公開されたbandcampの告知ツイートを見た瞬間には諸兄と同じように面食らったものの、この作品がこのタイトルとしてこの世に出たことにニヤニヤしてしまった。
バンド結成当初、諸般の事情によりヘルプでボーカルを担当し歌詞を書くことになった際の要望が「普段使うような言葉で歌詞を書いてみてほしい」というもので、難しい言葉を並べて結局なにを歌っているのかがいまいちわからない歌詞はよくあるし、自分もそれに陥りがちなため目から鱗が落ちる思いがした。それを念頭に置いて歌詞を作り、初ライブを終え、バンドに歌詞を渡して1年弱が過ぎ、今回のリリースの運びとなったが、命名された曲名とタイトルを見て「確かに人間の愚かさに纏わる諸々についての歌詞だった!全くその通り!」とひとり合点したのだが、その真相はいかに。ただ一つ言えることは、飾らずにありのままである事がこのバンドの魅力であることだろう。cold winterの今後の動向が楽しみでならない。