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Interview with 那倉(from ENDON) & KAPO(from SWARRRM) by 3LA

「更新」や「変化」とか進化とかと言う意識より正直に言えば、同じ事またやるの超ダリイ〜っていう感じです。」 / KAPO (SWARRRM) 「進化に意味は当然見出していません」 / 那倉 (ENDON)

ENDON、SWARRRM、そのサウンドは違えど国内エクストリームミュージックシーンの中で自身を更新しながら海外文脈でも高く評価される2組がDaymare Recordingsよるスプリットをリリース!! 今回のインタビューでは、ENDONから那倉、SWARRRMからKAPOの両氏に加え、リリース元であるDaymare Recordingsより濱田氏も参加。まったく立ち位置も異なる両者ですが、根底に共通して流れている意識が見えてくるはず。

Q: 最初の質問は、月並みではありますが、SWARRRM、ENDONがお互いのことをどのような存在だと認識しているかをお聞きしたいです。
世代も離れているし、背景としているバックグラウンドもかなり違うのではないでしょうか?

那倉: そうですね、初めて会話したのはギャラの交渉でした(笑) とにかく気まずかったです(笑)
当時というかゼロ年代は僕はグラインドとハーシュノイズのクロスオーバーに浸かっていました。そのどちらよりも混沌とした喧騒状態をアレンジするというのが目的でした。
SWARRRMも特異な喧騒状態をアレンジする偉大な先駆だと認識しています。しかも方法として骨太で、楽曲とフレージングとある種の演劇性で正に"CHAOS&GRIND"を体現している、という印象です。
2012年にex-FEAR OF GODのDAVE PHILLIPSとFRANSISCO MEIRINOの来日公演をEARTHDOMで開催したときに初めて招聘させて頂き、そこから少し気さくに話して頂けるようになったと認識しています。


あと司さんがVoを務めるようになってからは日本語と向き合うエクストリームミュージックとしても特異だと思います。
歌詞がない状態から歌詞がある状態へ移行しているという不思議な共通点も勝手に見出しています。

KAPO: 今、最高のライブバンドだと認識してる。初めて名前聞いたのはソルマニアから、ちゃんとしてると聞いた。褒め言葉で。随分前の事。
初めてしゃべったのは那倉君がライブのギャラ負けてくださいと楽屋にキョドリながら来た時だと思う。
印象が変わったのは『MAMA』出たくらいの頃のライブ見て アレッ!!て思ってから。ライブ凄いなと 同時に那倉君が痩せて韓流ファッションなって余計にアレッ!ってなって目が離せなくなった。『Through The Mirror』出てワオ!と思って『BOY MEETS GIRL』聞いてアレッ!と思った。



Q: 今回Daymare Recordingsからリリースされるスプリット作品はどのようにして実現したのでしょうか?
そして、双方がロッククラシックスなアーティストをカバーするというアイデアは当初からあったものでしたか?

那倉: SWARRRMが来京したタイミングで濱田さん交えて飲むのが何気に定例化していて、EARTHDOM(東京新大久保)の上のネパール料理屋で話に上がったんですよ。それで「いいすね!」ってことでまとまりました。カバーはスプリットの話が決まってから思いついたと記憶してるんですが、僕のアイデアだった、かな? どうでしたっけ?

KAPO: スプリットの案は濱田さんの提案でしたが 僕はENDONとはいずれスプリット音源出したいなと思っていたので バッチリでしたね。カバーの提案は那倉君からでしたね。今となってはショウケンの「愚か者よ」にすればよかったと後悔してます。

濱田(Daymare Recordings): ENDONとは結構長い間一緒にやってきていますし、普段から日常的にやり取りしているので、お互いにやりたいことはある程度共有出来ているかな、と。対してSWARRRMは『FLOWER』をやらせていただきましたが、どこかでもう一度組めたら、とずっと考えていました。それなら単独作というよりはスプリットかな、だったらENDON一択かな、という思惑でした。
ENDONの『MAMA』とSWARRRMの『FLOWER』はどちらも2014年9月のリリースで、僕の中でいつも並行して進んでいるアーティスト、という感覚があります。時間軸もそうだし、バンドとしての方向性や相性の良さもある。それはサウンド面でも、考え方でも。「それって、こういうことでしょ?」で伝わり合うものが多い気がしますね、飲みながら話していても。
ですので、「2019年の今このタイミングでスプリットをリリースして問題定義したい」みたいな野望じみた計画を立てていたわけではありません。2014年から5年経って、ENDON/SWARRRM/Daymareの三者が再び交わるタイミングに居合わせられた、ということです。



Q. Daymare Recordings、濱田さんの目から見て、「なぜ今、このタイミングで、このスプリットなのか」というところが聞きたいです。

濱田: もう2000年代に入って約20年、未だに日本には「音楽はいつも海外から始まって、日本に輸入して加工する」という風潮が強いように思います。特にハードコアやノイズに関していえば、元々海外も日本も同時多発的に出てきたものですよね。それがどこかのタイミングで、日本では「オリジナル足り得る」という意識が薄れてきてしまったというか。
勿論意識的にやれているアーティストもいて、そんなアイデアを共有出来る人達と組みたいと考えています。Daymareはハードコアや特定の一ジャンルを標榜しているレーベルではありません。ただ、「何らかのかたちでハードコアを通過し、そこから先に出てきたものを紹介したい」というコンセプトは設立時から持っています。このスプリットに関していえば、ENDONもSWARRRMもハードコア的な意匠もありますが、‘ハードコア・バンド’ではないですし。
海外での最前線や最先鋭は勿論意識しますけど、日本のバンドが音楽的に後れを取っているとは考えていないです。例えばFULL OF HELLはENDONの熱狂的なフォロワーで、ENDONの一挙手一投足を常に気にしているのは、分かり易い例かと思います。もう長い間、SWARRRMの名前も海外で轟いていますからね。そんな良き流れをあちこちで広めていければ、と。



Q. カバー曲について、なぜクラシックな楽曲をセレクトしているのでしょうか?深読みすれば、ロックの文脈に対して現代という歴史の先端からリスペクトを込めて…というには、あまりにも破壊的カバーだと思いました。

那倉: 当たり前ですが、現代的な楽曲の方が文脈の共有がしづらい。リテラシーの高低に差があるとも言えるし、音楽の好みって結構みなさん頑なじゃないですか。バンド内でさえも統制とれない(笑)
だからわざとロッククラシックスにしたのかもしれない。ワザとおじさんぶることで人と文脈を共有する。モヤモヤしますね。
Johnny Thundersはコーキがピックアップしたものです。
他に候補に上がったのはコーキからはFunkadelicの「Maggot Brain」、プレスリーの「Run on」、John Caleの「Heartbreak Hotel」(カバーのカバーになりますね)、自分からはJulie Londonの「No Moon At All」とNina Simoneの「Trouble in My Mind」などです。僕は女性の歌が歌いたかった。そういう願いは「Cosa Nostra」の冒頭で少し昇華されたのかもしれない。
オリジナルを聴いて頂ければ解ると思うのですが、勿論ジョニーサンダースは大好きですし、破壊と言うより生成と捉えてもらえると嬉しいです。



Q. 女性の歌をうたいたかったのはなぜなのですか?それは男性の歌と何が違うんでしょう。

那倉: 叫ぶのと歌だと少し違っていて、歌うというのは僕にとってはなにか別のものに成ったような気持ちでやった方が馴染むというのがあるのだと思います。なにか役のように考えないと歌は歌わない、といいますか。

Q: 実際楽曲を制作する上で、元々は白人の音楽とか、日本人であることとかって意識していますか?

那倉: これは意識下のことを扱いました。僕らがバンドをやるということの起源には"白人と関係すること"が横たわっているという前提を強調しました。第二次世界大戦での敗戦がなければ僕はENDONをやっていないだろうというヤクザな仮定法ですね(笑)
ランデイ内田氏はインタビューの中で「猿真似だったら猿真似でどこまでやれるかにとりあえず関係がある。メチャクチャで過激なサウンドをどこまで追求できるかってことだね」と言っています。
僕が好きな音楽の日本らしさは私的にはこういうことです。

KAPO: 僕は考えた事ないですね。ただ「この音は黒人にしか出せないだろう」とかは思いますよ。

Q: 僕はENDONの『BOY MEETS GIRL』は凄い作品だと思いました。前作までは、エクストリームミュージック、あくまでその文脈上で次のレベルへと進んでいく過程が見えていた気がしたんですが、『BOY MEETS GIRL』はそのエクストリームミュージック的な評価軸から自分から降りたんじゃないかとすら思いました。過激だなと思う。SWARRRMも同様に、アルバム毎に音を進化させていく...3LAが現時点の最新アルバム『こわれはじめる』のリリース元レーベルだから言っているだけじゃなくて、それ以前からも実際に賛否両論なラインを攻めていく感覚が毎回あります。で、このスプリットのリリースを聞いたとき、この2バンドにサウンド以上に共通するものってこの攻めていく感覚の部分だなと。
これは僕が勝手に持っているだけの感想ですが、お二人の中ではどう思っているのかを聞きたいです。

那倉: ありがとうございます。
音源やタイトルは独立したものでなく、その連なりにストーリーがあります。なので変化は必然です。音楽的変遷と僕らの身に起こる現実のストーリーは協奏して季節が流れるように全体を成します。
自分たちをトレースするというのは避けたいです。飽きたらおしまいなので。
前作はBLACK SMOKER からのリリースを念頭に置いて曲を作りました。USテイストで粘着質かつ重い、BLACK FLAG的な質感です。チューニングも3音半下げです。『歪神論』ではそういった重心の低さはありません。

KAPO: 意識的な部分も多少ありますが 体質的なものが大きいですね。
伝統継承だけが正しい道ではないでしょ。リバイバルは性に合いません。
自分たち自身を飽きさせない為もありますよね。

Q: 今回のSWARRRM側の楽曲、前作の方向性とは別軸で、不穏さとキャッチーが同居した新しいSWARRRM像も出来上がってきているような気もしています。長年活動を共にしてきたFutoshiさんが抜けて新体制になっていますが、制作は体制変わってからのものですか?

KAPO: カバー曲はhitotuiが弾いてますね。加入して一年過ぎてようやく慣れて来ましたね。

Q: 自分たちの音楽性を変化させていく両バンドへお聞きしたいのは、自分たちの中で飽きがくるからという意味とは別に、進化することに意味を見出していますか?つまり、ハードコアという音楽にエッジがなければ意味がないというような。

那倉: まず自分たちの音楽をハードコアだと思ったことがありません。モチーフとして様々な意匠を借用しているって感じですかね。むしろ曲は音楽的には退化しているとも言えるし(笑)
その時その時でなるべくいい雰囲気のものにしたいですね。
進化に意味は当然見出していません(笑)

KAPO: 最初期はそういう思い強かったはず。
今はもう他者に興味がないし、リバイバルの方が需要あるという現実もある。

Q: 他者には興味がなくても、自分たちの描いている道程のようなものを意識していますか?特に2010年代以降のスプリット作品は、その時その時の時代を表しているようなバンドと組んでいるような印象もあります。

KAPO: 全ての作品はその時々に自分自身で設定した合格ラインをクリアした物です。
スプリットの相手は我々を奮い立たせてくれる原動力になりえるバンドでなければなりません。
よく「良いバンドとスプリット出してる」と言われますが、当然、僕の憧れのバンドと出してます。
「更新」や「変化」とか「進化」とかと言う意識より正直に言えば、同じ事またやるの超ダリイ〜っていう感じです。
ハードコアという言葉に特別な意味を求める人もいて、ただのジャンルと捉える人もいる。どちらも正解でどちらを選ぶのも自由、その時々で使い分けるのも自由。ポリティカルである事を義務づけるのも自由だし、否定するのもその時々で使い分けるのも自由。文脈をこじつけと捉えるのも、正当な継承者と捉えるのも自由。ただのポーズも、本気になっちゃうのも自由。と本来は自由なはずだけど何故か限定したくなるのはロマンチックで憧れちゃう存在と認識させられちゃってるからでしょうね。
真実か虚像かは別として、ロックのロマンチックな部分(破滅、反抗、自虐、ドラッグ、反戦、暴力、社会批判、DIY、アナーキー、反権力等)の凝縮感は魅力的ですがその価値観を必要としてないバンドも多いのでは。



Q: 那倉さんへの質問になるんですが、例えば前作『Through The Mirror』はKurt BallouのGodcity Studioで制作されたりということで、音楽的背景というか、文脈的にはハードコア的な部分って大きいんじゃないでしょうか。そういえば、かつてFollow Upのインタビューでいわゆる「エモ」「激情」にバッサリいっていたのを覚えていますよ。「借用」っていうと言葉に距離があるように感じるんですが、ハードコア的な要素は自分たちの引き出しから出しているんじゃないかなぁと僕は思う訳です。
現在のハードコアシーンを見渡してもENDONみたいなバンドはいないしハードコアの括りで語るのもおかしいんですが、それでもライブで無修正のナマナマしくエモーショナルな表現を観ていると「これってハードコアよりハードコアじゃね?」って思うことがあるんです。逆にいうと、現在ハードコアと呼ばれているものが、「かつてハードコアと呼ばれていたジャンルのリバイバル」になっているという問いでもあります。表現のリアルさというか、今の時代だからこそということは意識しますか?

那倉: 僕にとってCONVERGEはあくまでカオティックハードコアなんです。ハードコアというのは、特定の文化と、ある人物のパーソナリティやアティテュードとの関係に対して他者が評価するときのタームだと思っています。
僕としては借用という距離で違和感はないですが、コーキなんかはハードコアにドップリどっぷりだったわけで、そういうやつがExploitedのことを考えながら書いた曲ですので「借用」よりは馴染んだものだと思います。
何かべつのもの、例えば「世界観」を表現するというものではなくて、実際のその場での行為として見てもらうものを提供するというのは意識してきました。

Q. レコ発の共演者も「今」のシーンの中であるカルチャーの最前線、エッジの部分を代表しているような感じがします。このメンツはどのようにして決定しましたか?

那倉: 大阪をSWARRRM、東京をENDONがプレゼンと言って差し支えないと思います。どちらも相談役として濱田さんが、という感じですかね。東京は冷たいロックンロールが聴こえるような気がする人たちにお願いしました。Klan Aileenは初顔合わせなので楽しみです。それ以外の方たちは普段から顔を合わしますし、お世話になっている方たちばかりです。

KAPO: シーンの事もカルチャーの最前線の事も知りません。正直 僕をワクワクさせてくれるようなモノはそういう所には無いと思ってます。大阪のメンツは流行に関係なく最高にカッコイイバンドという選択基準です。


Q: これはインタビューをしているときに毎回聞いている質問なんですが、今聴いている音楽でよかったものがあれば教えてください。
音楽でなければ、アート、映画、本、なにかしら「お?」となったもの、刺激になったものを教えてください。

那倉: 比較的最近のものをあげれば、Blood Orangeの『Angel's Pulse』、メタルはInfernal Coil、映画はポール・シュレイダーの『魂のゆくえ』。その流れで、原作は知っていたけど、避けていた『DOG EAT DOG』の映画も良かった。
国分功一郎の『中動態の世界』も面白かった。今はウェルベックの『セロトニン』が届くのを待っています。

KAPO: 印象に残ってるのは、お世辞抜きにENDONの今回の2曲です。CDを先日の大阪の発売記念ライブ時にもらって聞いて最初の10秒で殺されました。メールに添付された圧縮データとは全く印象違った。メールの時点では楽曲性放棄したのか?80年代的な質感とか感じてたが、すべて吹き飛ばされた、圧倒的に凄かった、理由なく圧倒的に凄かったというのが正直な感想。元々その構成の特殊性とかを評価してたわけでもないしノイズの良し悪しもよく分かりませんがロックバンドとして圧倒的なパワーと未知のエネルギーに満ち溢れ、自由な発想と超貫禄の演奏!
エクストリームハードコアとは変てこなデスメタルの事と違うと証明する最高な音源。

歪神論 -Evil Little Things- / ENDON + SWARRRM split (CD)
歪神論 -Evil Little Things- / ENDON + SWARRRM split (CD)
「今でもロックに更新の余地が有る」というレーベルインフォの謳い文句に嘘はない。2019年の現在の日本でENDONというバンドの存在は、エクストリームミュージックという言葉そのもの。音楽性を変化させながらも挑戦的に更にその先へと進むが、決して自己満足ではないその方向性には常に時代の空気を纏っているようにみえる。

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