私が参加する(率いる)ブラックメタルバンド、Yvonxheの2025年アルバムが完成しました。
2014年にリリースされた『Multicolored Libricide/異端賛歌』EP以降、スプリット、ライブ収録のカセットテープなどいくつかのリリースはしているもののアルバムとしては最初の作品以降、約10年の月日を経て完成に至る難産となった。次のアルバム収録曲が出揃ったバンドはレコーディングを開始し、2019年時点でほぼ全てのマテリアルは録音を終えたが決定的な最後の1ピースが揃わない状況の中、時代はコロナ禍へ突入、アルバム制作は暗礁に乗り上げてしまった。世に出す意義、理由に決定的な一打が足りなかったのだ。2022年にFra Hedensk Tid、Infernal Necromancy、Mass Kontrol Genocideとの4wayスプリット作『Reliquiae Quaternion』がリリースされたが、これは既に録音が終了している本作アルバム後に制作されたもので結果的にアルバムよりも先にリリースされることになった。
状況打破の切っ掛けとなったのは2024年、約4年ぶりに開催されることになった国内唯一とも言える地下ブラックメタルの祭典"Black Sacrifice"であり、このイベントへの出演は実質的なYvonxheリユニオンとなり、私達が集まる理由を自身に再認識させるものだった。それは全く単純な理由だった。私たちは演奏するために集まるのではなく、集まるために演奏するのだ。私達の血に流れるルーツ、ブラックメタル、スラッシュメタル、デスメタルからの影響を引き継ぎながらそれらを私達が提示すべきYvonxheのブラックメタルとして昇華し、表現し、そして前進させるのだ。その結論に達したとき、このアルバムが求めるサウンド像が明確になった。地下ブラックメタルの匂いを漂白することなく、しかしアマチュアリズムではなく新しいエネルギーを感じさせる次元へ到達しなくてはならない。そのため録音まではバンド自身で行なってきたが、ミックスとマスタリングは自分たちの手で行わないという判断をし、studio nostosと共に作り上げることになった。これまでの寒々しい寂寥感や哀愁のメロディを損なうことなく、バンド演奏の爆発力や生々しいドラミングを前面に据え、新しいYvonxheの音を表現することを目指した。多くのものを失った私達の2020年代という時代に相応しい作品を完成させるために。
「我々のブラックメタルはファンタジーではなく現実だ」
tracklist:
1. Trace Fossil of querulous delusion / 我が聖遺物
2. Raven Black Wound / 編笠百合
3. Skeleton No 124 / 砂の首飾
4. Invisible Alter / 妖孼めいた彙集にて
5. Incessant Mournful Tale / 哀哭冊子
6. Conjurations of Hematophagia / メタル・ヴァンパイア
7. Headless Sculpture / 忌み詞
8. Deformed Taranis / 天石屋戸
9. Godspell as a Nondurables / 葎の書架
10. Avoid The Salvation / 繭に包まるる奈落
11. Psyche / 汎霊
12. Sad Wings of Sytry / 堕つ刹那は
artwork by Yuka.Yoshihara
