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Interview with 明日の叙景 -『わたしと私だったもの』



Q. アルバムを聴かせていただきました。明日の叙景が登場したとき、自分は日本のバンドから高いクオリティのポストブラックが生まれたと感じましたが、本作は更に変化を遂げており、ポストブラックですらないサウンドという印象ですが、今現在、自分たちのバンドの音楽性をどのように捉えていますか?それともポストブラックの進化系という捉え方でしょうか?
明日の叙景 - わたしと私だったもの / Asunojokei - Awakening (Full Album)

布 : ありがとうございます。自分たちのやっていることはポストブラックだと思っています。今は現体制になった当初の、やりたいことをやってみるという姿勢から、演奏スタイルや表現したいことを形にするのに最適なのがポストブラックであるとする姿勢に変わりました。だから、今作は真っ直ぐで落ち着きのある作品になっています。とはいえ、ポストブラックそのものを作ろうというよりは自然に出て来るアイデアをポストブラックに落とし込むという感じなので、聴く人によっては別物だと思うかもしれませんね。

等力 : 自身の音楽に対する価値観やモチベーションは内向きなので、演奏や制作で実際に音を鳴らしている時、ジャンルやスタイルなどの固有名詞を意識することは少ないです。ただ、作品のリリースやライブ活動など、対外的に音楽を奏でることで自分たちの姿勢を主張する場合には、ある種の基準が必要だと考えています。そういう意味で、本アルバムはポストブラックメタルを題材にしている、と言えます。



Q. 正直『Till Your Death vol.3』の収録された「花装束」のようなキャッチーな楽曲がメインになるのではという予想をしていましたが、どちらかというと寄りメタル寄りになった気はします。

布 : 「花装束」は『Till Your Death vol.3』が参加バンド的にカオティック寄りな作品になると思ったのと、その前に作ったEPでは手数が少なく、コード感を重視する曲が多かったので、手数の多い変な曲を作りたくなったという二点の理由からあのようになりました。ちなみにこの曲、CDDBには「花葬束」と誤って入力されてしまい、ラルクの「花葬」みたいになっているんですよね(笑)メタル寄りになったのは、上の質問の答えにもあるように、ポストブラックを今の自分たちに最適なスタイルとして捉えたためだと思います。

等力 : 経緯は布の言う通りです。日々の営みとして音楽を奏で、時代の流れや周囲の状況を俯瞰しながら音楽を模索する行為自体を、音楽活動として自分たちは捉えていると思います。一つ一つの作品に終わらず、自分たちの作品と作品とを繋いだ線がメタ的なメッセージを含むと自覚しています。明日の叙景は、ヘヴィメタルとハードコアパンクというイデオロギーの異なる2つの音楽の共通項を自分たち独自の視点で見つけ出そうとしていると思います。


photo by Fumi (@fmkkk23)

Q. タイトル『わたしと私だったもの』とは?理解を助けるためのヒントをください。

布 : ヒントとなると難しいですね(笑)アルバムに収録する曲が全て揃い、タイトルを決める段階になり、まず、全曲の歌詞に当てはまる要素を考えました。思い浮かんだのが過去の自分との決別。そして、良くも悪くも自己を肯定するということでした。一言で表すのなら「再生」ですかね。それらから、このタイトルが浮かびました。「わたし」と「私」で表記を変えているのは漢字の重複を避ける意図もありますが、もう一つ、僕は漢字の「私」から凝り固まった印象というか、人を寄せ付ない感じを受けるので、そういった存在であった過去の「私」から、少し柔らかな「わたし」になったことを表現しています。ちなみに「私(わたし)」は実在する人ではなく架空の人物です。

Q. 10分を超える曲が2つもあります。また演奏や、楽曲としてもより複雑化…プログレッシブな方向性になっていると感じましたが、楽曲制作のプロセスも以前とは変わりましたか?

布 : その2曲は僕が原案の曲ですね。基本的に制作のプロセスは変わっていません。誰かがデモ音源を作り、スタジオで合わせながらアレンジします。ただ、物足りなさや詰め切れていない感覚などを得ることが多く、以前よりもアレンジを練り直すことが多かったです。今作はそのため複雑になったのかもしれません。意図的にそうしたわけではないですね。ちなみに今作は1,2,4曲目が等力、3.6曲目が齊藤、5.7曲目が僕原案の曲です。等力と齊藤は自分一人でデモ音源を作れるためスムーズですが、僕原案の場合、僕が弾いたギターの音源とざっくりドラムのフレーズを書いた文(ここブラストで!ここはゆっくり叩く!など)を各自に汲み取ってもらい、スタジオで合わせて作るため大変です。

等力 : 明日の叙景は前作の過誤の鳥E.P.の曲を作る頃よりメンバー全員で制作を行なっており、自由にアイディアを持ち寄り、実験や検証を行った上で意見を交わすことができる環境を大切にしています。今作では布と齋藤の大胆な楽曲構成やリズムなどを基に作った曲が多いですね。


photo by Fumi (@fmkkk23)

Q. アートワークでは日本画家の丁子紅子さんを起用していますが、このあたりの経緯も教えていただきたいです。日本語による日本のポストブラックで海外に出て行くことも視野にいれていますか?

布 : アートワークを担当してほしいと思える方を探していた際、TwitterのTLに死神紫郎というミュージシャンのアルバム発売の告知があり、そのCDジャケットを描いたのが丁子さんでした。その絵に一目ぼれし、丁子さんにオファーしました。漠然と和風なデザインにしたいとは考えていましたが、丁子さんを見つけられたのは偶然でしたね。

等力 : 海外に出て行くことが具体的に何を指すのかはわかりませんが、自分たちの感性に自然に響く方と一緒に制作し、さらにそれが大きく共鳴できる場所で活動が続けられたらと思います。

Q. 歌詞はすべて布さんが担当していますか?楽曲はみんなで作っているけど、アルバム全体の世界観的なコンレプトは布さんが担当しているように見受けられましたが正しいでしょうか?

布 : これまではそうでしたが、3曲目は齊藤が作詞をしています。コンセプトと世界観については、僕が作詞と曲の命名を行うことが多いので、自然とそのような立場になっています。世界観やコンセプトなどについてはメンバー全員、強いこだわりがないのでそうなっているのだと思います。

齊藤 : メンバーからの提案があり曲の原案も僕ということで、3曲目の作詞を担当しました。他の曲と比べてかなり個人的な歌詞ですが、他の曲とも共通する「過去との決別」という要素も含まれています。コンセプト等を共有するため、布が歌詞の解釈を細かく確認したのですが、個人的な歌詞だったこともあり、まるでカウンセリングを受けているような気持ちでした。(笑)

Q. すこし前の質問で「海外」という抽象的な質問でしたが、僕個人としては日本国内の音楽(オーバー、アンダーグラウンド含む)から海外まで視野に入れて活動しているバンドって少ないように感じています。今って人口が少子高齢化で、バンドをやる側の人口も、聴く側の人口も、要は若い感性が重要なカルチャー面において人口がどんどん減っていって、文化的に弱くなっていくんじゃないかって危惧している。日本の人口は今後も減っていくわけだから、国内で活動していても井の中の蛙というか、狭い範囲で活動していてもすぐある程度のポジションになってしまうと思うんです。現にポストブラックの音楽でいうなら、1stアルバムをこれからリリースする明日の叙景だって相当な注目株です。同じく国内で活動しているpaleが音源もリリースしていないのに海外から注目されているなんておかしな状況だなと思います。
話が長くなってしまいましたが、今回の前面に押し出された「ジャパンカラー」には、海外への意識があったんじゃないかと思い、明日の叙景勝負しにきたんじゃないかと思ったわけです。影響を受けているというV系要素も、ジャパンカラーと言えばそうだと思います。

布 : 水谷さんの考えには多くの人が共感すると思います。単純に考えて、日本人約1億人を相手にするより海外の人も含めて約70億人を相手にした方がいいでしょうし。ただ、いざ海外で活動することにヴィジョンを持ったり、アプローチする方法を知ったりすることが難しいのではないかと思います。自分たちも同じです。確かにpaleはどのように海外の一部に知られたのでしょうかね。本人たちに今度聞いてみます。海外では漢字が一部から好まれたりするので、差別化する上で日本感を出すのは有りだと思っています。ただそれは後付で、理屈抜きに和風な感じが好きだったから今作はこのようになりました。V系要素もWackenにDir en greyやギルガメッシュが出ていることなどを考えると海外へアピールする上でプラスに働くとは思います。

Q. 最初のデモ音源、EP、コンピとリリースがあって、これまで周囲の環境に変化はありましたか?今回のリリースを、今のタイミングにしたことのきっかけはありますか?回答の中で「過去との決別」とありましたが、それは音楽的な意味も含んでいますか?

布 : 環境に変化はありませんが作品が認められる瞬間に何度も巡り会え、幸せです。リリースのタイミングにきっかけはなく、普段の生活と相談しつつ、自然と今年の2月リリースとなりました。「過去との決別」と音楽性は無関係です。

Q. 明日の叙景の活動でアウトプットされる作品に込められたメッセージとは、プライベートなものだったり、内に向いたエネルギーでしょうか。それとも外の世界に向けて、社会やコミュニティ、シーンといったものに対して何かを提示する性格のものでしょうか? 余談ですが、前も言ったかもしれませんが、Dir en Greyて日本国内だとビジュアル系だけど、海外からは日本のメタルって捉えられ方もしていて、明日の叙景が自身をメタルと認識しているのと、彼らからの影響を公言しているのっていまさらですが少し納得がいくような気がしています。 いま、新しいバンドやシーンで気になっているアーティストはいますか?

等力 : 作品そのものに関しては前者で、自分たちの興味関心をベースに実験を繰り返している形です。バンド活動を通した外向きのメッセージとしては具体的な目標がある訳ではありませんが、経験や知見、「こういうことをやってみてもいいよね?」といった見解は何かしらの形で発信していると思います。そして、そういった発信がバンドの位置付けに影響を与えることは自覚しています。ジャンルやスタイルなどの枠組みに関心はありますが、それ以外の部分で独自の共通項の見出し方をしたいなと思っています。そもそも、自分はクラシック音楽出身で、その後にエレキギターを持った人間でして、そういった枠組みから離れようとするエネルギーが自分の中には常にあります。Dir en GreyやV系については自分自身はあまり通ってないので、わかりかねます。最近気になるアーティストとしては、バンドではありませんが、長谷川白紙の音楽には驚きました。技術と教養の蓄積から新しい音楽が出てくることに勇気付けられた感じもあります。


Q : レコ発に向けての企画の内容を、各バンドや見どころ、企画自体の向かおうとしているところなんかがあれば、教えてください。

等力 : 出演するバンドはみな、特定のジャンルやスタイルに埋もれることのない輝きを持ったバンドです。
どのバンドとも互いに共鳴する部分、また不協和する部分があると思っていて、観にきて頂く皆様には是非その響きを体感してほしいと思っています。
kallaqriは以前より共演したいと名前が挙がっていて、TILL YOUR DEATHコンピでご一緒した流れでお誘いしました。メロディアスさ、カオティックさのみならず、楽曲のストーリー性が自分たちと近いなと思っています。青森からきて頂きますので、是非、このタイミングで観て頂きたいと思います。
Marmalade butcherは実は自分が同人音楽をやっていた頃の知り合いで、どこかで共演したいなと思っていたのですが、偶然、布から彼らと共演したいと名前が挙がりお誘いしました。テクニカルで、今回のイベントでは最もさわやかさのあるバンドであると同時に、最も爆発力を持っているバンドだなと思います。つい先日ライブを観に行きましたが圧巻の演奏力です。
paleは、一本調子になりがちなポストブラックのサウンドをバンド全体のダイナミクスで突破できるバンドです。明日の叙景とは向いてる方向が近く、一方で手法が対をなしているなと思います。
彼らとは一緒に企画も行っており、この先も互いに刺激する仲になると思っています。
wombscapeは以前、TILL YOUR DEATHコンピのレコ発でご一緒した流れでお誘いしました。彼らのステージングやパフォーマンスには共鳴するところが多くあり、イベント当日の雰囲気を一緒に作り上げるバンドとして最適だと感じております。
オープニングとクロージングのDJとしてお呼びしたrisako kuroeは僕の大学の後輩で、ダークでしっとりとした質感のある選曲が非常に巧いDJです。会場のアースダムの雰囲気ともあうなと感じています。今回はイベントでは流れも大切にしたいので、オープニングとエンディングをスキルのある人に任せたいなと思っていました。

【LIVE INFO】
2/24(土)at新大久保EARTHDOM

w/
kallaqri
Marmalade butcher
pale
wombscape
DJ:risako kuroe



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Interview with Jonas (This Gift Is A Curse) by Kreativ Mag
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