関連タグ: 2020年 帯化 民族音楽 ポストロック

多摩川の河原でのフィールドレコーディング、そこに閉じ込められたものは何なのか

1stアルバム『擬似縁側型ステルス​』も多方面からの軸が多すぎて手にあまる作品に感じたが、それとは対照的に世の中がコロナの影響で大きな混乱に巻き込まれていく最中に多摩川の河原で録音されたというこの音源集はさらにめんどくさそうな何かが宿っているように感じる新種のトライバルミュージック。前作はまだエレクトリックな、例えばドラムセットやギターアンプといった機材の存在を感じることは出来たのだが本作は確かに河原で録音しているようなアコースティックな鳴りと空気が閉じ込められている。そしてトライバルな響きも本作はより濃厚になり、多摩川っぽさは一切ないほどに異様な雰囲気を放つ作品に仕上がっている。そもそも何故石なのか。わからない。ZINEを読んでください。
録音場所は調布...?調布と言えば3LA発祥の地であり、つつじヶ丘からバイクにのって多摩川にはよく行っていた。ZINEの内容は一見判りにくいけれど多摩ニュータウンと河原者、都市と辺境、そういったギャップをテーマとして浮かび上がらせる。つまり現在のコロナ騒動の最中に日本のみならず世界的に社会問題化した、というより解決を先延ばしに蓋をし続けていた差別や不公平へのアナロジーでもある。多摩川という地場も古くは部落問題があり、そして多摩ニュータウンは平成狸合戦ぽんぽこ(ジブリ作品)で描かれているような新しい文明を代弁するものではなく既に老朽化、衰退していく象徴、つまりはかつての栄光の時代の日本そのものなのだ。だが社会に不要なものはすべて切り捨ててもかまわないのか?
ダウンロードコード付き。

tracklist:
1. 新興住宅 02:28
2. 献立 02:46
3. ロープ 01:23
4. 多摩ニュー 01:13
5. 予知夢 01:00
6. 遊園 04:36
7. 没落 02:14
8. 穀潰し 02:15
9. 河原者 01:44
10. 無能 01:33
11. 河原結社 02:24