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Interview with 明日の叙景

ブラッケンドの始祖とも言えるIskraが提示したBlackened-Crustというサウンド、日本語表記として「ブラッケンド」と3LAでは読んでいるが、その言葉はやがて一人歩きし別のものへと変貌している。2010年以降のシーンにおいては各サブジャンルの分野においてブラックメタルとのクロスオーバーが進んでおり、世界各地で独自解釈でブラックメタルを取り込んだバンドが登場した。新たな動きはそれ自体わくわくする不確定要素も多い。ここ日本ではまだまだブラッケンドな要素を持っているバンドは少ないが、東京で活動する若手バンド、明日の叙景はその少ない中でも特異な進化を遂げそうな可能性を秘めている存在だ。正式音源は未だリリースされていない彼らにいち早くインタビューを試みた。



3LA:まずは簡単に自己紹介をおねがいします。 結成はいつごろでしょうか?メンバーそれぞれ他にバンドはやっていたりしたのですか?

Gt.等力(以下、等力):現体制での活動は1st Free Demoをリリースした2015年始めからで、結成のきっかけは僕が高校生の頃に、友達からDr.の齊藤とBa.の関を紹介してもらったことです。ただ、高校時代での外向けの活動は自主企画のスタジオライブを一度行っただけで、あとはもっぱら三人でセッションをしていました。ちなみに1st Free Demoに収録されている「泡人形」はこの頃に原型が作られた曲です。
それらと並行して、齊藤と関は2人でテンポが遅くて暗いロックバンドをやっていて、僕はメロコアバンドをやっていました。その後、僕が大学に入学して生活が一度落ち着いてきたあたりで、明日の叙景という名前でバンド活動を始めてみようと2人に声をかけ、しばらくはインストバンドとして活動していましたが、次第にボーカルが居た方がしっくりくるのではと感じ始めたので、twitter経由でVo.の布にDMを送りました。布に声をかけた理由は、彼が大学の音楽サークルでしていたConvergeのカバー動画を観たのと、ブラックメタルやハードコアを自分たち以上に良く知っている人だと思ったからです。

3LA:メンバーが集まるにあたって何かコンセプトはあったということですね?

等力:上記の通り、すでに1st Free Demo に収録されていた楽曲は現メンバーになる以前からあり、その練習動画を布に対して送りましたが、その時に、「カオティック、ブラッケンド、シューゲイザー等に興味があれば、これからそのような音楽を自分たちと模索していきませんか」という具合に誘いました。布はこれが初めてのいわゆるバンド活動ということもあり、メンバー個々にとっての新しい音楽に触れてみるというのがコンセプトだったとも言えます。

3LA:なぜこの「明日の叙景」というバンド名になったのですか?

等力:僕が好きな漫画家であるつげ義春の作品に、「海辺の叙景」という作品があって、それを元に考えました。明日の叙景というバンド名は英訳しようとしてもできません。

3LA :これまでに発表したのはデモ音源のみですか?

等力:そうです。ちなみに次の作品は四曲入りの1st E.P.という形で2016年の二月ごろに出す予定です。

3LA:周囲の反応はどうだったでしょうか?

Vo. 布(以下、布):メタルやハードコア好きな人はわりと気に入ってくれましたね。あと、エクストリームミュージックに触れたことない人の中でも少数ながらかっこいいと言ってくれる人がいて驚きました。ただ、中にはフレーズや展開の甘さを指摘する人も居て、まだまだデモの曲は伸び代が残されていると感じます。

3LA:メンバーの中でだれが曲を作っているのですか?

等力:基本的に僕がメインのフレーズを作っておいて、それを元にスタジオでセッションをしながら曲を完成させていきます。ただ、新作のE.P. では布と齊藤のアイディアをメインに作った曲もあります。僕がエンジンとしての役割を果たし、それを理論的・技術的に支えるリズム隊がいて、それらを布がうまく選別してコントロールするイメージです。

3LA:歌詞はどういうコンセプトに基づいて作っているのですか?

布:歌詞については死や自己嫌悪など暗めなテーマが多いです。陰鬱な話が好きなので歌詞を書くにしても主人公を設定して、その主人公の感じる辛苦や悲哀を歌詞にしています。二月に発表予定の E.P. では全曲を通じて、人と上手く関係を持つことのできない自意識過剰な人間が精神的に追い詰められていく様を歌詞にしたので、物語性のあるものになっています。


photo by ミツハシ カツキ (@xScherzox)

3LA:音源を聴く感じだとブラッケンドではあるけど ブラックメタルではない…というかメンバーはブラックメタルに影響受けているのでしょうか? ある程度のバックグラウンドはあるように感じているのだけれど、自分にとってはわからない部分も大きいと感じます。

等力:デスメタル、グラインドコアのバンドの対バンとしてブラックメタルバンドを観ることがあり、そういう意味でバックグラウンドの一つとしてはあると思いますが、僕自身ブラックメタルに関してはまだ未知の部分が大きいジャンルです。

布:僕は(ブラックメタルの影響を)受けています。ただ、プリミティブ方面は少しかじった程度で、ポストブラックメタルやアトモスフェリック系の方をよく聴きます。

3LA:具体的に影響を受けたもの、インスピレーションの源泉になっているものがあれば教えてください。

布:ハードコアからはenvyやheaven in her arms。ブラックメタルからはLifeloverやGhost Bathあたりに影響を受けています。歌詞が日本語なのもあってシャウトに関しては海外のバンドよりも国産バンドを参考にしており、ホイッスルヴォイスや泣き声などはポストブラックからの影響が強いですね。あとはDir en greyの京やムックの逹瑯もヴォーカリストとして憧れています。



等力:僕は日本のバンドに強く影響を受けていて、挑戦的な姿勢という意味では、Endon、kamomekamome、Self Deconstruction等のバンドからインスパイアされています。シューゲイザーサウンドという点ではCOALTAR OF THE DEEPERSから強く影響を受けているように感じます。サウンドに関しては無数の影響がありますが、一つ大きな指標として、矛盾を抱えられることとしての「美しさ」を持つ作品を作りたいなと常に思っています。
バンドとしては、メンバーのバックグラウンドが様々ですが、やはり捻りが効いている音楽を作りたいという思いが共通しており、それがバンドとしての動力源となっています。

Ba.関:中高生の頃から主に2000年代の邦楽ロックを好んで聴いていて、Vo.の布やDr.の齊藤も影響を受けたバンドとして挙げているDIR EN GREYなども好きです。最近は系統はバラバラですが海外のロックバンドの音楽も聴いていて、具体的なバンドを挙げるとすればデンマークのMEW、アメリカの Toolなどです。ベースプレイに関しては邦楽のロックバンドの中でも特に思い入れのあるTHE BACK HORN のベーシストに影響を受けていて、特に曲のコード感や展開を意識したメロディアスなベースラインはとても参考にしています。また、そういった部分がバンドのコンセプトにも繋がっているように感じます。

Dr.齊藤:DIR EN GREYやLUNA SEAといった、所謂”ヴィジュアル系と言われてきた人たち” から色濃く影響を受けていると思います。それは音楽ジャンル的にももちろんそうですが、それらのバンドの、他と被ったら負け、という精神は、2つのバンドを聴いていくうちに自然と自分の中の基礎になっていったと思います。聴く音楽は、その2つの幹から枝が分かれるような感じだと思います。ドラムに関しては、以前通っていたドラムレッスンの講師がジャズやフュージョン方面の人だったため、そのようなドラムプレイの影響は受けていると思います。

3LA:V系からの影響を公言できるのって僕の中では結構衝撃的なんですが、お話を聞いていると「音楽」というものに対してすごくフラットに、素直に向かい合っているなという印象です。 逆にこうなりたくはないな、っていうスタイルはありますか?

齊藤:確かに、自分も数年前はV系からの影響をあまり公言したくありませんでした(笑) ただ、メンバーともそうですが、フラットに音楽を聴いている人たちと交わることが多くなってから、抵抗は少なくなりましたね。なりたくないスタイルというのはあまりないです。

等力:同じく、特に思い当たるものはないですね。



photo by ミツハシ カツキ (@xScherzox)

3LA:普段よくつるんでいるバンドはいますか?

布:叙情系ハードコアのConcealmentsやビートダウン/ラップコアのSECONDLOW 、ビートダウンハードコアのヱヰ十などとはよく共演しますね。遊びに行くライブが被ることも多いです。ジャンル的には近くはないのですが・・・・・・。

3LA:若い世代ではブラッケンドな音を選択するのって割と普通なことですか?

布:自分たちの周りを見る限り普通ではないと思います。ブラッケンドハードコアを聴いている人もそう多くはないですね。ただ、先日共演したGraupel はブラッケンドメタルコアと名乗っていて、ギターの垣本さんがこれからブラックメタル要素を強めていく予定であるとも仰っていたので同世代のなかでは比較的近しい存在になるのではないかと思います。

3LA:バンド内や仲間内で話したり飲んだりするときの話題ってどんなことが多いですか?

布:メンバー同士ではあまり話さないですね(笑)。いつもスタジオに集合して、黙々と練習して、サッと解散します。一緒に飲んだこともまだ無いですね・・・・・・。他のバンド仲間とはもっぱら音楽かアニメの話題が多いです。

等力:バンドとしての重要なやりとりはきちんと明確に行いますし、スタジオ後にちょっとしたまとめや会議は行いますが、口数は少ないです(笑)。僕自身、お酒を飲めるようになったのが今年からなので今まであまり人と飲むことはありませんでしたが、最近は音楽をやっている友達と飲んで真面目な話をしたりと、これがいわゆる「さし飲み」というやつなのかと感じている具合です(笑)。



photo by ミツハシ カツキ (@xScherzox)

3LA:僕のような年代の人ら(30代)がサウンドに ある種の懐かしさを覚えて聴いているのをどう思う?

齊藤:伴奏の随所で歌謡曲にみられる音階が使われているのが関係しているのかなと思います。和声的短音階っていうものなのですけど。

布:自分たちが意図してやっていることではないので少し不思議ですね。ちなみにどういった音楽から懐かしさを覚えますか?DaitroやSaetia などの激情系あたりでしょうか?

3LA:ある種の懐かしさって00年代初頭の激情バンドの、よくわからんセンスだったり、当時のバンドの試行錯誤故のどっちつかずな感じだったりなのかなと思っていましたが、話を聞いていると90年代V感がその正体だったのかもと思っています笑

布:実はメンバーの誰一人として激情ハードコアに精通していないんです(笑)強いて言えば僕が少しかじっているくらいで。歌謡曲的なメロディやエクストリーム路線に進もうとするも、イマイチ振り切れていない感が、 V系ぽさをかもし出しているのかもしれませんね。

3LA:等力さんはブレイクコアのソロ音楽家としても 活動されていますが、このあたりのフィードバックが明日の叙景の活動に影響することはありますか?
※日本最強ブレイクコアフェス #ヤバイコアリリパ の出場を賭けたバトル「天下一アーメン武道会」 こと #天一アーメン にて優勝を飾っている。

等力:元々、バンドのデモを製作するために宅録環境をそろえていたので、その延長でソロでの活動を前から行っていました。明日の叙景を始め、一人でバンドサウンドをやっていても仕方がないと思い、去年よりサンプリングや打ち込みで音楽を作る方法を模索し始めました。基本的に明日の叙景ではメンバー皆で奏でられる音楽を追求しているのに対して、ソロでは自分一人でしかできないことを行っている形です。あまり手法やスタイルに対する執着はなく、それぞれにおいて、自分達あるいは自分が求める音楽を奏でられるよう模索している形です。特に意識して、相互の影響について考えたりはしていませんが、無意識の部分もあるでしょうし、それぞれのフィードバックが影響しあっていることは否定できないと思います。



photo by ミツハシ カツキ (@xScherzox)

3LA:今後はどんな方向に進化していくのか楽しみにしていますが、これからの方向性は決まっているのでしょうか?

布:デモの段階ではハードコアにもブラックメタルにも振り切れていなかった感があるので、そっち方面に突き進んでいきたいですね。ブラッケンドハードコア要素と空間系の音を織り交ぜていくスタイルなら自分たちにも合うのではないかと思っています。具体的には OathbreakerとDeafheaven を足して2で割ったような形を模索中です。ただ、メンバーそれぞれのプレイスタイルや音楽のバックボーンが大きく異なるので自分たちでもどう発展するのか未知数なところがあります。

3LA:今後関わってみたいシーンやバンドはいますか?

布:heaven in her armsとCoholとの共演が一つの目標ですね。あとはSTUBBORN FATHERやCYCLAMEN、長野の kOTOnoha、金沢のrole など上げたらキリがないですね(笑)。ハードコア界隈だけではなく、いずれはブラックメタル界隈とも一緒にやってみたいとも思います。

等力:上記のバンドやシーンとはぜひ共演したいなと僕も思います。スタイルが違うことは承知ですが、僕自身の大きなルーツであるグラインドコア、デスメタルのバンドとも対バンしてみたいなと思います。

3LA:では次にリリースされるEPが正式音源ということですね。 それまで楽しみに待ちます! 今後の予定なんかも教えてください。

布:ありがとうございます!現在、ライヴは2016年の二月に二つ決まっています。詳細は以下の通りです。

2/21(sun)『Ebb&Flow Vol.1』@新宿NineSpice
a soulless pain
Within the last wish
ANGAGEMENT
F.P(kyoto)
SECONDLOW
SCENE OF REMEMBRANCE
Concealments
明日の叙景

2/26(fri)『ANOMALOUS COLLISION 10』@新大久保EARTHDOM
self deconstruction
WARFUCK(from FRANCE)
F.I.D.
ANATOMIA
O.A:明日の叙景
出店:はるまげ堂

2/21のライヴに合わせて1st E.P.を発売する予定です。 一方では叙情&モッシーなイベント、もう一方ではエクストリームなイベントになっています。
また、TILL YOUR DEATH RECORDSから2016年の夏頃リリース予定のV.A.「TILL YOUR DEATH vol.3」にも参加します。ラインナップがとても豪華ですので、こちらの方もよろしくお願いします!

(参加バンド)
ANCHOR(新潟)
CYBERNE(大阪)
DEAD PUDDING(香川)
kallaqri(青森)
NoLA
REDSHEER
URBAN PREDATOR(茨城)
weepray
wombscape
明日の叙景
and more…

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明日の叙景へのインタビューは以上になりますが、インタビュー本編とは別に、メンバーそれぞれがエクストリーム音楽にハマることになったきっかけの曲(またはバンド)、影響を受けたアルバムを3枚セレクトして頂きました。彼らの音源と合わせて聴いてみるのも面白います。

布(vo):
【きっかけとなった曲】
Bury me an Angel (Arch Enemy)
【影響を受けたアルバム】
黒斑の侵蝕 (heaven in her arms)
Roads to Judah (Deafheaven)
Pulver (Lifelover)
等力(Gt):
【きっかけとなった曲】
Hypocrite (Self Deconstruction)
【影響を受けたアルバム】
The World e.p. (9mm Parabellum Bullet)
NO THANK YOU (COALTAR OF THE DEEPERS)
Symbolic (Death)
関(Ba):
【きっかけとなった曲】
AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS (DIR EN GREY)
【影響を受けたアルバム】
DUM SPIRO SPERO (DIR EN GREY)
アサイラム (THE BACK HORN)
And The Glass Handed Kites(Mew)
齊藤(Dr):
【きっかけとなった曲】
Unholy (KISS)
【影響を受けたアルバム】
C:LEAR (SUGIZO)
UROBOROS (DIR EN GREY)
透明なのか黒なのか (赤い公園)

過誤の鳥 / 明日の叙景 (CD)
interviewed by Akihito.Mizutani (LongLegsLongArms Records)

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