Interview with KOUSUKE & MAX (The Donor)
Hexis Japan Tourの2公演にも出演し3LA的にも記憶に新しいThe Donorにインタビューを敢行!
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Hexis Japan Tourでは大変お世話になりました。2014年を振り返りつつ、これからの事なども聞いて行きたいなと思っていますのでよろしくおねがいします。
KOUSUKE:
Hexis Japan tourではこちらこそ御世話になりました。刺激的な2日間でした。今日は宜しくお願い致します。
Q: まずアルバム『The Agony』について聞いて行きたいのですが、リリース当初の周囲の反応はどんな感じでしたか?僕も衝撃を受けました。
KOUSUKE:
リリース前に海外のバンドのジャパンツアーでの共演や県外のライブが入っていたので会場でアルバム収録の2曲を抜粋して無料配布していた効果もあってか発売前からちょっとずつ反応があったのとレーベル側が色々動いてくれたのもあったので発売直後から思っていたより嬉しい反応が返って来ました。
MAX:
当初は…もともと僕らのことを知っていてくれた人が買ってくれてたって印象ですね。そこからじわじわ広がってくれている感じがあります。バンドから直接買いたいっていってくれる人、特典の内容で買う店舗を迷う人など、待っていてくれた人はいたって感じですね。
Q: 3LAでも入荷させてもらいましたが、2014年の国内リリース音源の中でも特に反響の大きかった作品だと記憶しています。何度か売り切れて再入荷させて頂きました。
KOUSUKE:
ありがとうございます!
丁度その時ぐらいに立川バベルで初めてお会いしたんですよね。「勝手にロン毛で髭モジャモジャの仙人みたいな人だと思ってた」って俺言ってましたね(笑)
ホントにごめんなさい(笑)
MAX:
3LAさんは特にレビューなどしっかり書いてくれてたのもあるのではないでしょうか。僕も欲しくなりました。
Q: ありがとうございます。ウチはネオクラストや激情ハードコアなどemoい音源の取り扱いが多かったのですが、そういったシーンへもリーチできるという確信はあったのでしょうか?
MAX:
確信というほどではないですが、僕は今挙げられたようなジャンルが好きなので同じ趣味の人が聴いてくれたらいいなというのはありました。
3LAのネオクラスト考察やインタビューも以前から参考になるなとチェックはしてました。そもそも僕たちはどこのシーンにも属してない気がするので臆せずいろんなところにアプローチしたいとは思っています。
Q:どこにも属していない、というのはそうかもしれないですね。クロスオーバーを感じる。音のジャンル的にはヘヴィメタルなのかもしれないし、それをハードコアと感じる人もいる。そして今現在のアンダーグラウンドシーンの最前線と言えるようなネオクラストとかブラッケンドとか呼ばれるような音も取り込んでいて非常に面白いし、まだまだ広がりそうな気はしています。
結成当初からこういった方向性を指向していたのでしょうか?
MAX:
結成当初はいろいろと考えましたね。編成的な限界とか、前のバンドとメンバーが同じだからどう変化をつけるかとか。方向性はまだ定まってないというか、そのときそのときです。音楽性としては多分広がると思います。でも広げようと思うと軟弱化していくんですよね、それは避けたい。あと、やるならなるべくタイムリーな音楽をしたいなと思ってました。リバイバルなこともいいけど、やっぱり僕は変わったことしてる方が好きです。
ネオクラストとかブラッケンド、ポストブラックとかその辺については単純に音楽好きなのと飽き性だから色々チェックしてるうちに出会いました。メロデスとかにしても黎明期の雰囲気が好きです。 こう、ギラッとしてるというか。あとトホホなバンドもいたり。ジャンルで言うと特に意識していないのでぜひ誰かにカテゴライズしてほしいですね。メタルコアとかデスコアとかも世代によって出てくるバンド違いますもんねぇ。メタルやハードコアに対しての憧れというのは、あります。
ZEROさん(Co/SS/gZ)と話してた時「KARPと初めて対バンした時彼らはものすごく若くて自分たちのことを「俺達はヘヴィメタルバンドだ!」て言ってたんだよね」って聞いて面白かったんです。
そういうバンド好きですね、本人本気だけどすごいオリジナルでって。アメリカのバンドだけど音はUK!みたいな。ネットの時代でそういうのは減ってそうだけど。余談ですがTITLE FIGHTの新譜にはすごく感銘を受けました。
Q:The Donorというバンド名にはどういう意味があるのでしょうか?どういったルーツから今のようなサウンドに辿り着いたのか。メンバーの個人的な音楽趣味の遍歴も気になります。
KOUSUKE:
俺はそんなに音楽が詳しい訳でも無いんですが、浅く広くって感じです。今はバンドを聴くってよりは色々なドラマーのプレイを観たり聴いたりしてます。楽曲でもドラマーでもロックしてる感じが個人的には好きなのでトミーリー(Motley Crue)、デイブグロール(Nirvana)等のドラムは最高ですし、自分のプレイの根底にはそういう人達のドラムスタイルがあると思います。
MAX:
The Donorという名前は僕の好きなアーティストJudee Sillの曲名からとりました。本来キリスト教的なニュアンスの曲みたいですが…。歪んだギターも叫びも出てきませんが、ぜひ聴いてみてください。
最近ColdWorldの新譜のSEにもサンプリングされてました。
ドナーといえば臓器ですが僕はなんとなく、見た人や聴いた人になんか心象というか印象というかそういうものを与えることができればいいなって。辿り着いたというか、まだまだ過程だと思いますよ。
個人的な音楽遍歴は…10歳?ぐらいの頃姉がイカ天好きでかぶれて父親のフォークギターを引っ張りだしてはじめたけど1週間で挫折して、それもらって挑戦してたら地元のメタル先輩にメタルを教えてもらって衝撃を受けて、そこから好みがスラッシュメタル、デスメタルとチューニングが低くなって、高校生ぐらいの頃にはハードコアを取り扱うレコード屋さんに通って。世代的にはメロコアが流行ってたり、DJが流行ったりしてた時代で。友達だからそういうのもかじって。
で、RESENTMENTに入ったりGREENMACHiNEのメンバーがやっていたCOLLAPSEに加入したり。ほかにもヘルプでBARBARIAN-MURDERとかジャズファンクのバンドとかとにかくいろんなバンドやりました。そのころはじめてRESENTMENTでいろんな土地に行ってライブしたりバカ騒ぎすることがすごい新鮮で楽しかったです。十代後半には先輩に「デスメタルなんか聴くな!プログレを聴け!」とプログレッシブ・ロックを教えてもらったり、ジャズファンクの人にはスピリチュアル・ジャズやガラージ、P-FUNKとか教えてもらって。でも聴いてたのはレーベル的にはDischord,Ebullition RecordsとかLovitt Records、DIM MAK(その頃の!)catuneが好きだったな。
その後挫折して、バンドしなくなってDJに挑戦したけど更に挫折して(笑)もやもやしてる時LAで活躍している日本人プロデューサーがいるとたまたま見かけて、一人で会いに行ったんです。Toshi Kasaiさんという方で、数分しか喋れなかったけど「なんでも遅いってことはないよ。俺もやっぱ好きだからねぇ」という一言が染みて。帰ってきてしばらくしたらバンドのお誘いがあって、そしてTHE DONORを結成してRESENTMENTも動くことになって、再始動したGREENMACHiNEからもお声がかかり。 今に至ります。
Q: 個人的にはアルバムに歌詞カードがなくて残念だったのですが、どんな内容のことを歌っているのでしょうか?
MAX:
歌詞のほとんどはものすごく直接的でネガティブなことを歌っています。日本語または英語が混じっています。僕とベースとそれぞれで書いていますがほとんどは怒り、衝動、憂鬱、幻覚、死とかそういったことについてです。
“Shine”だけは死んだ友人の歌で、星になって上から見下ろしてほしいってメッセージをこめました。歌詞カードについてはよく聞かれます、今回の制作での一番の誤算でした。歌詞も表現なんだなと改めて思ったので次作からはつけようかなと思いました。
Q: それぞれの楽曲の破壊力もさることながら、アルバム全体を通しての流れも素晴らしいと思います。先程の“Shine”に関してもあの流れで聴くとめちゃくちゃ上がりますね。
KOUSUKE:
ありがとうございます!
アルバムの流れは結構考えましたね。いかに聴く人が最初から最後まで飽きないで聴けるかって所はだいぶ重要かと思いますね。
MAX:
最初のじらしが気に入ってます。あと個人的にアナログLP好きなのでLPはリリースされていませんが裏面への折り返しも意識しました。
Q: ボーカルは二人で振り分けて歌っていますがどのような役割分担をしているのでしょうか?
MAX:
音色の違いですね。パートによってどっちの声やラインが映えるか。あと歌詞の内容でここは僕に歌わせてってのもありました。
Q: 録音のサウンド面も相当凝っていますよね?これはどのような音作りをしているのですか?
KOUSUKE:
クリアより汚なく録りたかったんです。
ドラム単体だとドラムセットを2つ持ち込んで色々組み替えたりヘッドを曲によって替えたりしました。曲によって雰囲気も色々あるので曲に一番合うと思うセットで叩かせてもらいました。生々しく素材の音を生かしたい!ってのが今回の自分のテーマでした。
MAX:
なんて答えればいえばいいでしょうか(笑)
まず言えることは激しい音ではありますが結構レイヤーというか、音の重なりを意識しています。アルバムに関して言うとライブで培った経験とエンジニアAKIRA氏の手腕によるところでしょうか。ギターで言うと僕はライブの時は2〜3種類のギターの音をミックスして演奏しているんですがアルバムの方はほとんど1種類の音です。セットアップは割りと外国のバンドではスタンダードなセットアップなんですが、日本では使っている人を見たことないですね。
興味がある人は僕に聞いてください。
Q: Hexisのメンバーも相当The Donorを気に入っていたのですが外国のリスナーにも受けるサウンド、言い換えれば世界標準のものを作れていると思います。これに関しても 当初から世界標準を目標にしていたのでしょうか?
KOUSUKE:
どうなんでしょう。メンバーによって違うとは思うんですが当初は世界標準とかはあまり考えてなかったかな。ただ海外でライブしたいってのはありましたね。
MAX:
あのKennのランキング(※Hexisのベーシスト。彼がメディアに寄稿した記事の2014年ベスト音源にThe Donorの『Agony』が入っていた。)にはびっくりしましたね。そうですね、わりと日本だけでなく世界中の音楽を聴いているので外国でも受ければいいなというのはぼんやりとありました。というか日本、世界と分ける感覚はそんなにありません。あと、マスタリングをBrad Boatright(Audiosiege) をお願いしたっていうのはすこし世界標準を意識したかな?
対世界ということでおもうことは、ひとつは金沢のGREENMACHiNEの存在。僕が十代の頃から世界に響く重たい音楽で活動していました。日本どころか北陸の田舎でも関係ないんだって。もう一つは様々な海外のバンドと共演したこと。Deafheavenと一緒にやった時、オーストラリアに行った時、Strength Approachと国内回った時。音楽は言葉の壁を超えることを感じました。
Q:僕としてはやっぱり小さな島国の日本の音楽をもっと世界で存在感を示せるようなものにしたいと考えていますが、あまり海外へ出て行こうとするバンドは多くないし、国際的なキャリアを築いて行けるバンドは少ないように感じます。それは何故だと思いますか?
KOUSUKE:
俺が海外でやりたかったのは、ただ単純に海外の人達に日本で無いところで観てもらってどんな反応があるのか楽しみたかったんです。 自分達がどのくらい通用するのか?って考えは昔からあるし、石川県から北陸、北陸から全国、全国から海外に武者修行行く感じに近いかな。あとは色々な県に色々なバンドがいるのと一緒で海外にもたくさんのバンドがいるのでたくさん知り合いになれるのが楽しいです。
MAX:
海外の活動に関しては僕らはひよこ同然で、まだまだこれから学ぶことや経験すべきことがあるってことをふまえて。これは活動していていろんな共演したバンドと話してて感じたのですが、海外に向けた活動に対して意欲的なバンドもいれば「日本で楽しいから外に出て行かなくても…」ってバンド、「まず日本でしっかり固めてから!」とか様々いるんではないでしょうか。休みが取れないとか。
でも知り合った限り、国際的なキャリアを積んでいるバンドはやはり発信を怠ってないと思います。あと地方に住んでいて思うけど僕らの地元にも「なにもわざわざ遠くまで行かなくても地元で楽しければいいじゃん」っていうバンドもたくさんいます。僕はできればどんどん発信していければなと思っています。やっぱ嬉しいし楽しいじゃないですか単純に。基本的に今まで絡んだ外国のバンドの人はみんなナイスガイだったなぁ。
Q: 記念すべき1stアルバムのリリースということでしたが、リリースにあたってバンドとしての狙いはありましたか?そしてそれは達成されたでしょうか?
MAX:
そうですね、結成からの集大成という側面がありましたが、それはできたと思います。今も手にとって聴いてくれている人がいるので満足しています。今までの自分たちについて客観的にみれたので次に活かせるし構想もあります。
Q:次の構想が気になります。そういえばHexis Japan Tourで話したときに『Agony』に収録されている楽曲はバンドの1側面でしかないというようなことも仰っていました。このアルバムでは見せていないバンドの顔があるという認識でよろしいでしょうか?
MAX:
そんな思わせぶりなこといってましたっけ(笑)
そうですね、『Agony』に収録している曲は結成当初のものもあるし、アーカイブ的な面があると思います。次に作品を出すときには楽曲面でも変わるでしょうしレコーディングならではのアイディア、とかもっと色々チャレンジしたいですね、トンガリは残して!
Q: 2014年は多くのバンドが生まれたり音源をリリースしたりしましたが、特に気に入っているバンドや作品はありましたか?
KOUSUKE:
個人的にはEYEHATEGOD、TRIKORONAとSTUBBORN FATHERのスプリット、isolateのアルバム、INFERNAL REVULSIONのシングルが良かったですね。気に入ってるバンドはあげればキリがないですね(笑)
MAX:
2014年でいくとこの辺りが印象に残りました。(以下順不同)
Full Of Hell & Merzbow
DARK CIRCLES/MMXIV
Svffer/ Lies We Live
Ictus / Discography
Mutoid Man/Helium Head
Pallbearer/Foundations Of Burden
HIEROPHANT/Peste
USA OUT OF VIETNAM / Crashing Diseases & Incurable Airplanes
Godflesh /A World Only Lit By Fire
Floor /Homegoings and Transitions
Indian/From All Purity
THOU/Heathen
Downfall of Gaia/Aeon Unveils the Thrones of Decay
Foxing /The Albatross
Alvvays /always
Grouper/Ruins
Daughter/If You Leave
Q: The Donorとしてこれまでいくつかの大きなイベントにも出演をしています。節目として記憶されているイベント等はありましたか?
KOUSUKE:
1つは2013年に行われたハマーソニックですね。前から凄く出たいイベントでまさか出れるとは思ってもみませんでした。それも地元の大先輩GREENMACHiNEと一緒に出演ってのが感慨深いですね!
もう1つはやっぱり総武線バイオレンスですね。このイベントがキッカケで多くの人達に名前を知ってもらえましたね。このイベントに出ていなかったらTILL YOUR DEATHからも出せてなかったと思うし、今の自分達を取り巻く環境ももしかしたら無かったかもしれませんね。
Q:The Donorはライブバンドですよね。音源が良いのはもちろんだけど、ライブでの説得力が凄まじい。ライブで確実に痕跡を残しているのが伝わって来ます。2015年以降はなにか大きなイベントなどはあるのでしょうか?今後のリリース予定などについても教えて頂ければと思います。
MAX:
がむしゃらにやることを心がけてます。僕らがエキサイトしないと見てる人もエキサイトしないと思って。リリースはスプリットやコンピの話があるので、実現できたらと制作中です。
単独も早く作りたいですね。
Q:ありがとうございました。では最後に、僕らくらいの年齢になると家族ができたり仕事を優先しなければならない時期があったりするものだと思いますが、そんな中でもThe Donorはかなり積極的にライブを展開しているイメージがあります。その原動力となっているものは何なのでしょうか?
そして音楽を鳴らしていることについて、特別な想いはありますか?
KOUSUKE:
俺は結婚していて2歳の子が1人と今年にもう1人産まれるんですが、オーストラリアツアーの時はまだ子供が生まれて3ヶ月だったのでちょっと申し訳なかったですね(笑)
家庭と仕事とバンドのバランスは正直結構大変です。メンバーにも申し訳ないなぁって思う時もあるし。でも大変やからってどれかを捨てる事は考えられないです。捨てるなら今頃とっくに捨てています。先輩バンドマンの方達でも家庭を持ってもガンガンやってる人達いますので自分次第だと思います。
あとは理解のある家族で本当に感謝してます。原動力は息子です。 今の小さな夢は息子を海外ツアーに連れていく事です。うち親父がずっと海外にいたり単身赴任でいないのが当たり前の家庭で、小さい時の親父との思い出があまり無いんです。仕事なんで仕方ないですし、今になったら大変な仕事してたんだなぁって尊敬します。俺は仕事ってよりバンドしてる生きざまを息子に伝えたくて、将来息子が大きくなった時、ウチの親父アホやけどバンドで色々行ってスゲーな!!って思ってくれたら嬉しいですね。で海外も一緒に行って現地のバンドマンとかと一緒に写ってる写真とか見て、将来バンドマンに目覚めてくれたら最高です(笑)
MAX:
あります、やっぱ好きだからだとおもいます。他に自分が情熱を注いだり、心血を注げるものは今はありません。
失ったものもデカイけど(笑)
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