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俺はWITTRをなんとか理解したくて初期の三部作を聞き込んでいた時期がある。カスカディアンブラックメタルとはなんなのか。それはオールドスクールなキリスト教的な価値観に対する反抗、といったタイプのブラックメタルではなく2000年代当時は革新的な考え方だったと思うし、真偽は確かめようもなかったが彼らがDIYな思想を持ち、自給自足に近いような生活をしているという噂にたいしても一定の信用を置いていた。全く根拠はなかったのだが、彼らの思想や生活、それがリアルのように感じられた。
カスカディアンブラックメタルを当時は「自然崇拝」という解釈をしていたが、『Celestial Lineage』によってその意思を地球や自然といった概念よりも遥か遠くの宇宙に及び、『Celestite』では完全にアンビエントな宇宙の塵になってしまい、自分の思考も追いつかなくなり正直興味を失ってしまってました。そして『THRICE WOVEN』も聴いてなかった。本作『Primordial Arcana』はRelapse Recordsからのリリースとなり、メタル色が復活していたことに気づいて入荷となっているのですが、聴けば聴くほどに自分の中にあるモヤモヤしたものが生まれている。そう、あれは一体なんだったんだ。あの『Celestite』で完全に自分を突き放したアレはいったい何だったんだよ!
『Primordial Arcana』は完璧な、現代のブラックメタルを表現している。WITTRの初期からのファンでも納得の作品にはなると思う。だが、それはどこか自分に寄り添ってくれるものになっていることのモヤモヤをかき消してはくれない。あの時俺を突き放したのは...あの時の答えを聞かせてくれよ。この映画のようなMVでさえ自分にはリアルに感じられない。エスタブリッシュされている姿、完成され、確立されているのだがどこか「メタル商品」であるかのような印象がある。しかしその奥には確かにWITTRのサウンドは死んでいないと感じさせる何かはあるのかもしれない。そう、これは仕切り直しだ。自分にとっては再び彼らと向かい合うためのものだ。

tracklist:
1. Mountain Magick 05:55
2. Spirit of Lightning 06:24
3. Through Eternal Fields 05:54
4. Primal Chasm (Gift of Fire) 05:01
5. Underworld Aurora 07:29
6. Masters of Rain and Storm 10:43
7. Eostre 03:05