大衆が崇める価値観に迎合したロックンロールは死んでゆくだけだ。
サバイブする為という名目で合理化/最適化の末にポップ化し、そしてSNSにより日々加速されたこの現代に渦巻くメガやビットの海に放流され、無数に漂っているデータとしての音楽ではなく、時代錯誤的なまでに人間臭く、不器用だが力強く荒々しい強靭な日本語のヘヴィロックを聴きたくはないか。
2023年に完成された大阪SeeKが放つ渾身の1stアルバムはそんなリスナーにぴったりの、この現代に対して強烈なアンチテーゼを放つ国内エクストリームミュージックの傑作である。大阪の地で活動を続けてきたSeeKの歴史は長く、単独EP作やスプリット作などリリースを重ねてきたがアルバムサイズの作品はこれまで存在せず、本作が待望の1stアルバムとなる。同じく大阪発の世界レベルで活躍を続けるPALMのボーカリストToshiが主宰するDeliver B Recordsからリリースというのも熱いポイントだ。
サウンド的にはNeurosisやFall Of Efrafa等に代表されるハードコアパンクの精神で演奏されるドゥーム/ポストメタルやブラックメタル的な文脈を踏襲しながらも、自身と向き合い徹底的な日本語表現を突き詰めたからこその、全身から滲み出るような孤高のオリジナリティは本作の音・歌詞・アートワークからも十二分に感じることが出来るだろう。「探し求める」という意味も持つ”SeeK”というバンド名の通り、彼らの軌跡には「開拓心」という言葉がふさわしい試行錯誤の痕跡がある。
一時期はツインベースかつギターレスという変則的なバンド編成の時代もあったが、その後のメンバーチェンジを経て本作は Vo+Gt+Drのスリーピース編成にて制作されている。しかし、スリーピースでありながら強烈な重低音が響き渡る怒涛のSeeKサウンドには過去様々な時代の歴史とその蓄積を感じることが出来、一切の隙のない様には1stアルバムでありながらこれまでの集大成的な壮大さも表現されている。そして聳えたつようなアートワークと共に提示されたアルバムタイトル”故郷で死ぬ男”である。まるで昭和の日本映画のようなその言葉、響きが意味するものとは?
今を生きているヘヴィロックリスナーへ、現代に向けた強烈なアンチテーゼが結実した本作の奥底、音の中に刻まれた魂の燃焼を感じて欲しい。
-TRACK LIST-
1.名日-MEIJITSU-
2.深海-SHINKAI-
3.黒い雨-KUROI AME-
4.隣で同じ日を-TONARI DE ONAJI HI WO-
5.異教徒-IKYOUTO-
6.夜露に映る-YOTSUYU NI UTSURU-
7.一握の残火-ICHIAKU NO ZANKA-
8.故郷で死ぬ男-KOKYOU DE SHINU OTOKO-