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Katie Bejsiuk - "The Woman on the Moon"(LP)

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2019年に解散してしまったフィラデルフィアのローファイインディーロックバンド、Free Cake For Every Creatureの中心メンバーであるKatie Bejsiuk(以前はKatie Bennettという名義であった)の2022年作、初のソロアルバム、Double Double Whammyからのリリース。

この作品は、静かな夜が本当によく似合う。

Free Cake For Every Creatureで聴かせたエネルギッシュな感じとはまた違い、落ち着いたフォーキーな作品だ。

ソロとはいえFree cake〜のバンドメンバーや、同じDDWに所属するFloristのEmily SpragueがMV制作に参加するなど数多くの素晴らしいミュージシャンたちと、この自分自身へ向かっていく内側への世界を作った。ここには、Katie Bejsiukという一人の女性の鏡の中の世界がある。

10代、20代、30代と移り変わっていく女性としての自分の自己探求。一体自分は何者なのか?Free Cake〜の音楽性は特に『talking quietly of anything with you』(2016)がよーく表していると思うのだが、太陽に照らされたKatieがアルバムジャケットにぴったりな、仲間たちと映る眩しいほどの若さに溢れた青春を表すようなローファイ的なインディーロックという印象だった。

しかし今回は、月夜に照らされたKatieたったひとりの横顔がある。太陽と月、という比較もできるがやはり今回のコンセプトは、"GirlからWoman"へと移り変わる中での自己探求と心の動き。

そして、その移り変わりの中の葛藤を、今回ゲスト参加している彼女を取り囲むアーティストたちが、それぞれの音を持ってそっと見守っているようだ。

人間はどのように成長していくのか。アーティストは、その時どのように表現するのだろう。このレコードは、FloristのEmily Spragueがバンドから離れて一人で音楽を制作した過程にも似ているように思う。

「Onion Grass」は、FloristのEmily Spragueがビデオの監督を務めたものだ。美しい自然の造形物と、自分自身の内面を表す対比。大人になった今ここから過去を見つめている。

そして最後を締めくくるトラック「Nightloop」 は、部屋の窓を開け放ってレコーディングしたという1曲。 (そのため外を車が走る音などが入っている)この曲は、まさしくこの作品自体について歌っている曲で、自分の人生をループして、見つめ直している。

このレコードを聴き終えた時、きっと多くの人が同じことを考えると思う。自分が誰なのか。自分自身を見つ直すということは、ただ感傷的に浸るのではなく未来への自分への糧になるのだと。

Free Cake For Every Creatureのファンたちが、新しい音源を静かに静かに待ち望んでいたであろう。間違いなく、私もそのうちのひとりだ。この12曲は、私たちの期待以上に美しくも大きく意味のある時間を共有させてくれる。

Tracklist:
1.Mother's Records
2.Feels Right
3.Vespers
4.Onion Grass
5.Candy Cigarettes
6.Little Sister
7.Fly Through
8.Tourmaline
9.Said No
10.Olive, NY
11.Queen Anastasia
12.Nightloop



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