温故知新、アイデア豊富な90'sシーン黎明期音源!
みちのくオンラインによってリリースされた90'sハードコアを中心としたディスクレビュー本。そのテーマはつまり「90年代の多様性」。さまざまなサブジャンルの文脈が交差し合うシーン黎明期の混沌を表現しているが、著者が通っていないためNYHCは除外しているとのこと。
90's US emoシーンの中でほとんど歴史に残っていないAndi Camp関連音源。彼女の残した音源は垢の抜け切れていないサウンドなのだが、音の数も少なくてシンプル、そしてグッドメロディ、商業的なラインにはとても乗らないのだけれどピュアな音楽として残っています。リリース毎に特殊ジャケットを用意したDIY的なきめ細かさも素敵だ。
USエモの伝説的存在とも言えるChristie Front Driveの1st,1995年作。哀愁メロディを乗せたマイナーな楽曲に、決して力強くないが全てのダメティーンネージャー達の抱える苦悩や青春を歌い上げるかのうようなボーカルが素晴らしく胸が締め付けられる。
1991年にリリースされたEbulltiionのコンピレーション。90年代のストレートエッジなハードコアに対して、Ebullitionの提示の仕方はそういうのだけがストレートエッジじゃない!こういうのもアリなんだという意思表示だった。ここで注意すべき点は、レーベルオーナーKent自身はストレートエッジに対して深い理解と愛があったこと。それ故のメッセージだったことを考えると「アンチ」と捉えるのは間違い。これこそ「オルタナティブ」だった。
このファンジンは90's当時現在進行系であったパンク・ハードコアシーンに焦点を絞り込み1994年にスタート、所謂シーン黎明期の熱気を今に伝える内容になっている。ファンジン自体は2006年に#50が出版されて終了したが、ファンジンに関わっていたメンバーの何人かはGive Me Backというジンをスタートさせている。"エモ"はハードコアなんだと改めて気づかせてくれる一枚。
ebullitionの最初期のリリースでもあるDowncast。これを現代のエモ、激情好きの若者が聴いたときどう思うのだろうか。しょっぱいメタルコアだと思うだろうか。あまりにも現代の激情サウンドからかけ離れてしまっているが、彼らのようなバンドがいなければ今日の激情シーンも無い、ルーツとして重要な作品である。不穏さを醸し出す音の生々しさ、メタルとは違う感情剥き出しの怒りの叫び、スローパートでよれるビート。だが、その揺れ幅こそ重要だ。
1990年代前半を駆け抜けたStruggleのディスコグラフィー。DowncastやBorn Against等と並んでUS激黎明期の重要バンドのひとつ。改めて聞いてみると同時期のDowncastやBorn Againstとは異なり楽曲がかなりお洒落というか洗練されている。重いミッドテンポなビートで次々と叩き付けるリフの数々、アイデアが秀逸。初期のニュースクールと激情シーンが枝分かれしている瞬間というか、現代からディグる視点だと交差している瞬間。
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