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昔から思っているんですが、世の中には色々な音楽があってバンドがあって、そしてメディアや評価軸みたいなものが目に見えないけど存在していて、"表現が更新されていくこと"って刺激的なものではあるんだけど、一方で変わらないものっていうか普遍的なものの良さっていうのがあって、その普遍性を磨きながら何度も出していくバンドっていうのもいて、このsassya-というバンドはそういうバンドだと思っています。
前作『脊髄』はそのタイトル曲「脊髄」がその普遍性の核みたいなもので、アルバムというフォーマットの中にたくさんの言葉と音が詰められているけど結局その「脊髄」に全てが集約されていく作品だった。だからある意味で「脊髄」だけで十分なんだけど、「脊髄」を100%かそれ以上に響すためにそれまでのアルバムの曲たちは必要不可欠で、逆に「脊髄」というハブを通してすべての楽曲が繋がっていた。というわけで、この『呼吸』というアルバムも、結局のところ「同じ世界」に集約されていくのでほぼ同じ構造を持っていて、音楽性として演奏が云々、楽曲が云々、グルーヴが云々の話はメディア的な軸としてはあるんだけど、結局は同じ世界、同じ世界をくれよっていうルーザー感覚で歌われるエモーション、それは喪失。喪失なのです。sassya-はかっこつけながらも人の弱さ、明るみに出ない感情の発露、諦めきれない情けなさ、昼と夜の間、子供と大人の間、いろいろな隙間にある影を歌うのであり喪失なのです。2020年という巨大な喪失の年を誰しもが体験してしまった今、やはりこの情けなさすらリアルと言えるのかもしれない。

tracklist:
1.Red
2.声
3.Travis
4.再生
5.2020
6.瞬間 (Album ver.)
7.Phone
8.S
9.穿孔
10.同じ世界